医療機関のサイバー攻撃対策が急務!全日本病院協会がBCP研修開催の背景と必要な対策

医療機関を狙うサイバー攻撃が深刻化

公益社団法人全日本病院協会が9月4日に「サイバー攻撃に関するBCP研修~効果的なBCP策定のために~」をウェブ開催すると発表しました。この研修開催の背景には、医療機関を狙ったサイバー攻撃が急激に増加している現状があります。

フォレンジック調査を行う現場の立場から申し上げると、医療機関のサイバー攻撃被害は想像以上に深刻です。患者データの流出、医療システムの停止、手術の延期など、人命に直結する問題が多発しています。

実際の医療機関サイバー攻撃事例

ランサムウェア攻撃による診療停止事例

私が実際に調査した事例では、地方の中核病院がランサムウェア攻撃を受け、電子カルテシステムが完全に停止しました。この攻撃により:

  • 救急受け入れが3日間停止
  • 手術を延期せざるを得ない状況が発生
  • 患者データの復旧に2週間を要した
  • 復旧費用だけで数千万円の損失

攻撃者は医療機関の「止められない」特性を悪用し、高額な身代金を要求してきます。このような攻撃は決して対岸の火事ではありません。

患者情報漏洩による二次被害

別の事例では、クリニックのサーバーが不正アクセスを受け、患者の診療記録が流出しました。漏洩した情報には:

  • 患者の氏名、住所、電話番号
  • 診療内容、処方薬の詳細
  • 検査結果、画像データ

これらの情報が闇市場で売買され、患者への二次被害が発生。医療機関は訴訟リスクと信頼失墜に直面しました。

全日本病院協会のBCP研修詳細

研修プログラムの特徴

今回の研修は2部構成で、理論と実践の両面からアプローチします:

第1部:サイバー攻撃に関する基礎知識

  • サイバー攻撃の手口と最新動向
  • ランサムウェア攻撃の仕組み
  • 実際の被害事例分析
  • 効果的な対応策

第2部:実践的ワークショップ

  • 攻撃発生時の初動対応
  • 役割分担と連絡体制
  • 復旧プロセスの検討
  • 事後対応と再発防止策

研修開催概要

  • 日時:9月4日13:30~16:50
  • 形式:WEB(Zoom)
  • 対象:理事長、院長、その他責任者等
  • 参加費:会員病院23,100円/人、非会員病院24,200円/人(税込)
  • 定員:60名
  • 締切:8月21日

医療機関に求められる具体的対策

技術的対策の重要性

フォレンジック調査の経験から、医療機関に最も必要な技術的対策をお伝えします:

1. 多層防御システムの構築
– エンドポイント保護:各端末にアンチウイルスソフト 0を導入
– ネットワーク監視:不審な通信を検知
– データ暗号化:患者情報の保護

2. アクセス制御の強化
– 最小権限の原則:必要最小限のアクセス権限
– 多要素認証:パスワードだけでない認証
– 定期的な権限見直し

3. バックアップ体制の確立
– 3-2-1ルールの実践
– オフライン保存の併用
– 復旧テストの定期実施

組織的対策の必要性

技術だけでなく、組織的な対策も重要です:

職員教育の徹底
– フィッシングメール対策
– USBメモリ管理規程
– パスワード管理ルール

インシデント対応体制
– 24時間連絡体制
– 外部専門家との連携
– 報告・連絡フローの整備

セキュリティ対策チェックリスト2025年更新のポイント

厚生労働省が2025年5月に更新予定のサイバーセキュリティ対策チェックリストでは、以下の項目が強化されます:

  • クラウドサービス利用時のセキュリティ基準
  • テレワーク環境でのセキュリティ対策
  • IoT医療機器のセキュリティ管理
  • インシデント対応体制の詳細化

これらの項目は立入検査時の確認項目となるため、事前の準備が必要です。

中小医療機関でも実践可能な対策

限られた予算での効果的対策

大規模病院でなくても、以下の対策で大幅にリスクを軽減できます:

1. 基本的なセキュリティ対策
– 信頼できるアンチウイルスソフト 0の導入
– 自動更新の有効化
– 定期的なセキュリティ診断

2. ネットワーク分離
– 医療システムと一般業務システムの分離
– ゲストネットワークの設置
VPN 0による通信暗号化

3. 定期的な脆弱性診断
– 外部からのWebサイト脆弱性診断サービス 0の活用
– 内部監査の実施
– 改善計画の策定

費用対効果の高い対策順序

限られた予算の中で優先すべき対策順序:

  1. エンドポイント保護アンチウイルスソフト 0の導入
  2. データバックアップ:自動バックアップシステム
  3. 職員教育:セキュリティ意識向上
  4. アクセス制御:権限管理の強化
  5. 監視体制:異常検知システム

サイバー攻撃被害時の対応フロー

初動対応の重要性

攻撃を発見した際の初動対応が被害の拡大を防ぎます:

発見から30分以内

  1. 感染端末の隔離
  2. 管理者への緊急連絡
  3. < インシデント対応チームの招集

  4. 外部専門家への連絡

発見から1時間以内

  1. 被害範囲の特定
  2. 関係機関への報告
  3. 患者・職員への連絡
  4. メディア対応の準備

フォレンジック調査の実施

適切な証拠保全と原因分析のため、専門的なフォレンジック調査が必要です:

  • 攻撃経路の特定
  • 被害範囲の確定
  • 流出データの特定
  • 再発防止策の立案

まとめ:今すぐ始められる対策

医療機関のサイバー攻撃対策は「いつか」ではなく「今すぐ」始めるべき課題です。全日本病院協会の研修参加を機に、以下の対策を実行しましょう:

immediate actions(即座に実行)
アンチウイルスソフト 0の導入・更新
– 職員向けセキュリティ研修の実施
– バックアップシステムの点検

Short-term actions(短期間で実行)
Webサイト脆弱性診断サービス 0の実施
– インシデント対応マニュアルの作成
– 外部専門家との連携体制構築

Long-term actions(長期的に実行)
– セキュリティ投資計画の策定
– 組織的な対策の継続実施
– 定期的な見直しと改善

患者の生命と個人情報を守るため、医療機関のサイバーセキュリティ対策は待ったなしの状況です。この機会に、包括的なセキュリティ対策の検討を強くお勧めします。

一次情報または関連リンク

厚生労働省サイバーセキュリティ対策チェックリスト

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